ふるさと再生京都懇談会 現地取材レポート-2012年3月22日(木)

南丹からの流れ 風レンズ風車が夢と未来をつくる

-町工場と九州大学の研究室がつながった風レンズ-風力発電を-

 3月22日(木)午後2時から、南丹市園部町若森高橋にある風レンズ風車販売・施行代理店、(有)共立機工の社長岩永康弘さんの話を聞きました。現地に近づくと車の窓から、ちょうどほっかむりしたような二本の風車が見えました。日本で生まれた風車の画期的な発明が、町工場と研究室をつなげて風力発電のあらたな未来をつくります。

【参考】
九州大学 応用力学研究所 新エネルギー部門 風工学分野HP
http://www.riam.kyushu-u.ac.jp/windeng/staff.html
京都の風レンズ風車販売店 (有)共立機工 HP
 住所 〒622-0058京都府南丹市園部町若森高橋1-2
http://kyoritsu-windnet.co.jp/kyouritu1207/kazerenzu.html

【風レンズの原理】

①普通の風車に図のようなつばを羽の回りに取り付ける
②そうすると風を受けた時に、つばの外側の気流が乱れ渦が出 来る。この渦の内側、羽を通る部分の気圧が下がる。
③それで、内側の空気の流れ(風)が外側より早くなる。
 風レンズはこの原理で、普通の風の中で風車をより早く回すことになり、風力発電を効率的(従来の風車に比べ3倍の発電量)に行うことが出来るのです。

 一見簡単に思えるこの原理、九州大学の大屋教授を始めとする研究チームが、10年に渡る研究を続けて開発してきた画期的な発明なのです。風レンズ風車はこの図のように構造は簡単で、これまでの普通の風車に比べコンパクトで、回転による空気を切る騒音もぐっと低減し、視覚的にも安心感があり落雷やバードストライクによる事故なども低減できる利点を持っています。

【岩永康弘さんの話】

町工場と研究機関の出会い

 私たちの会社はもともと大企業からの受注によって注文通りの部品を作るのが仕事でした。しかし自分たちで何か作れないかと考えていた。そこで、風力発電に目をつけたわけです。いろいろ調べていくうちに10年ほど前に、九州大学で研究開発がすすんでいると知りました。そのなかでこんな風車があると知って、とんでもないことやな、風車づくりを簡単に考えていたけれど、私どもが手を出せる領域ではないと気付き、どう関わっていったらよいのか、なにかお手伝いはできないかとアプローチしたわけです。
 

実験用の形をインターネットで送られてくる、それを私たちも解析して削って形にするのです。私たちのところが削ったものが、今までよりも精度が高かった、それでどんどん信頼されて現在のようなおつきあいになりました。それで、町工場でつくると先生から提案がありました。これまでは大手さんと国と研究機関があたりまえというシナリオで、その中で町工場が入るということは難しいことでした。それを大屋先生はやろうとおっしゃって下さった。周りからも反対の声もあったようで、失敗したらどうなるかと。こうしたことから、こちらも仲間達もより一生懸命にとりくんでいかなくてはいけないと強く思うのです。

中小企業の心意気

  こんな小さな町工場と研究機関が直接つながるというのは画期的なことです。現在十数社が集まっています。近畿の会社が多いのですが、これを成功例にして全国にコミュニティをつくっていきたいと思います。研究機関がこういう町工場とつながると安くて良いものができる、自然エネルギーで地域経済も回すという立場からも成功させたいと思います。小さいビジネスですが、町工場のちょうど手に合う仕事のやり方で、うまくいくとマスコミさんがとりあげてくれるので、それを追い風にしながらコミュニティを広げていくような、自分たちだけ運良くできたというだけで終わっては面白くありません。風レンズ風力発電が商品として流通しだすと今の十数社のグループではこなせません。そうなったときに、コミュニティができていれば広げることが出来る。
  いまの中小企業は、メーカーからの注文で言われるとおりのものをつくり、ちょっと不景気だと5%・10%値引きしなさいと言われます。どんどん疲弊していく、こんなやり方で子ども達に後を継がせられないし後継者もいないということになるのです。夢のあることにはなりません。ですから、町工場と研究機関が結びついた仕事の成功例としてコミュニティも広げたいのです。

風レンズ風車発電について

 風力発電は風が吹かないとどうにもならないので、科学的な検証の下で、風車を設置して有効であるのかないのかを調べた上で販売します。まじめに調査して売っていこうという姿勢です。これまで小型風車はほとんどモニュメントで、仕事をしていないものです。そういうところに販売していたということ自身に非常に問題があったのではないかと思います。我々はそういうことのないように科学的な風況精査というものをやっていこうと思っています。これまではこの風況精査に大変なお金がかかっていました。これをぐっと安くできるソフトもつかって行い、設置場所の精査から販売、メンテナンスまですべてをやれるようにして、ユーザーさんと長い付き合いをしていきたいと思います。風がちゃんと流れるということを科学的に検証した場所は、よっぽど何か形が変わる(ビルが出来たとか地形が変わったとか)ことが無い限り、十年二十年と風が吹き、エネルギーを長くとり続けられると考えています。おじいちゃんのつくった風車が今も発電しているよといわれるようなものにしていきたい。
 風は、京都で言えば日本海側がやはり良好でしょう。また、府内には地形的に風の集まる場所が点在してます。
 風車の向きを変えるのも風の力で、首の所にベアリングが入っていて、集風体自身が風を追いかける役目もするので風に向かうのです。
 台風などですが、風速40mくらいまでは耐えられる構造です。しかし、竜巻は風速80~100mといわれていますので直撃されればダメですがほとんど可能性はないと思います。また風が強くなるとディスクブレーキがかかり止まります。これは、回りすぎて発電の制御板が破損する可能性があることや遠心力で羽が壊れることもあるからです。小型一基で家庭の太陽光パネルくらいの発電量が見込まれる(風の具合による、パネルは夜間は発電できない)と考えられます。風速4.5mを超えるとパネルをしのぐという計算です。建設費は現在はKW300万円くらいですが、100万円~150万円くらいをめざしています。
 風で電気が起こる、これは非常用の電源としてつかえるのではないかと考えています(学校など避難場所に設置しておく)。すると、非常時に灯りを確保したり、地下水くみ上げのモーターを回し水を確保したり、ラジオやインターネットの電源にもなり情報源としても使えるということで、宣伝しています。

風力発電について

 町に必要な電力は、年間で3000KWが一家庭の必要電力と言われているところから計算できるのですが、風力発電はたしかに不安定なのです。使う量も逐次変わっています。電力会社は火力発電でずーと調整を随時行って一定のさせています。風力発電でぶれても火力で緩衝させ安定させるというベストミックスは必要です。そこに原子力を入れるかどうかが問題なのですが。原子力は一定していますので、逆に夜間の電気などを使わせることになるのですが。私の工場では風力発電の電気は全部使って関電から補うことで制御しています。もっともデリケートな機械もそれで動かしています。
 風レンズ風車は小型発電のほか現在博多湾で洋上発電所の実証実験が始められており、そのプロジェクトにも参加させてもらっています。洋上発電の浮体のスペースを使って、太陽光や波力発電でもエネルギーをつくるし、その場で養殖なども行い水産加工までもっていくというような所まで考えがすすんでいます。付加価値をつくるというように考え、採算だけでなく漁業の復活、浮体などは造船業も潤い、大型発電機は大手のメーカー、小型発電機は中小企業もできるし潤うなど、いろいろな産業の活性化にもつながります。経済のカンフル剤として、半端なお金ではできないので本気で国もとりくまないといけないと思います。

原子力発電とエネルギーについて思う

 福井原発は府県が違うことは関係なく地理的に近隣です。30Km圏というのが一つのくくりとして取り上げられていますけど、福島の場合は多くの放射性物質は海側へ流れています。福井の場合、何かあったら福島どころではないと思います。30Km圏という想定は無意味だと思います。風はこちらに流れているのですから。京都市もダメでみんな避難しなくてはならないということが起こるでしょう。この問題は、組織とか政党とかを度外視して、日本の国民の将来がどうなるのかという、超党派で本当に真剣に考えていくことが必要です。日本の産業の将来性ということでも転換期に来ていて、この大きな犠牲を無駄にしないために、これを一つの布石としていろいろな教訓をもとにいままでちょっとぐちゃぐちゃになった日本が目を覚まして、本来の日本人の心が動き出したということにしなければいけないと思います。
 洋上の発電は、今の原発に対抗するための発電として、洋上に持っていくのが一番良いという考え方なのです。我々のやっている小型発電は一軒でも風の強く吹くところは使ったり、大型は洋上でしっかりと行ったり、あっちこっちで自然エネルギーというものを使っていこうという形です。
 地熱なども規制があり難しいのですが、環境を守るために地熱発電はやらせない一方で原子力でガンガンやっています。福島みたいになってどっちが環境を守ることなのか疑問がわいてきます。自然公園のなかに、CO2を出さない地熱発電ある風景も自然を守っているという発想ができないのかなと思います。
 自然エネルギーが広がるためには国の後押しが不可欠です。いまベストミックスと言って、原子力をどんどんすすめようという動きがあります。なしくずしにもっと大きくしようという勢力もあるようです。電力会社からすれば大きな固定資産をなくすことになるのだから抵抗することになるんでしょうけれど、もし何かあった時の被害というか損失するものはお金には変えられないものがたくさんあると思います。それまで覚悟して原子力をやらなければいけないことなのか。代替えのものがあって、日本はトップクラスの技術を持っていて、いま産業として育て世界に輸出できるようにすれば、いい日本に復活すると思うのです。
 電力買い取り価格に注目しています。あれを見ると国が本気かどうかが分かります。20円前後なら国はやる気がないと言わざる得ないのです。事業者として採算に合わないことはできません。本当に普及したいのならこのことを考えないと。これがどうなるかマスコミももっと書いてほしいです。マスコミも電力会社が大口のスポンサーですから本当にまとをえたことは言えないみたいですね。利益誘導みたいな、一部の所に利益が行っている見たいなことにならないような社会の構築をしないといけないと思います。自治体にもがんばってほしい。

…………ふるさと再生京都懇談会取材班レポート20120322…………

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