興味関心はバラバラでも村を楽しむ思いはいっしょ

  • 日時2011年8月27日(土)午後2時より28日(日)
  • 場所京都府南山城村民宿童仙房山荘にて


【一日目】報告・学習会と交流会

-ふるさと再生京都懇談会in南山城村-

プロローグ

田中代表あいさつ

 

  南山城には、住民運動のマグマだまりがある。それをうまく引き出してきた。また、村の多様な考えを
持つ人が参加し、一致して動いている。何故、京大名誉教授や生駒から来る人、童仙房に有名な方が入って来ているのか、その仕組みづくり、ここまで来た情念とも言うべきものは何なのか。何より上村淳之さ
んが何故南山城に目をつけたのか、知りたいことがいっぱいある。中山間地でとりくむ私達の運動に生かしていくヒントがあるはず。しっかり学習、交流し生かしていきたい。
  都市計画の分野では、適正人口という言い方は否定されてきたが、三千数百人の規模が、南山城のすばらしい活動を生みだした原因なら、もう一度その面から合併についての見直しも必要ではないか。人と人がふれあい、力をあわせる楽しさなど、単に組織論、形態論だけでなく実質論を話し合う場ともなるのではないかしっかり学習、交流していきたい。

報告・学習会

○地域再生プロジェクトチームの活動と成果
柴垣治男さん(プロジェクトチーム代表)


<村を楽しむ仲間達>
 私たちがやろうと考えたのは、橋本さんが村長の時に始まっています。村を愛することを心情としてやっています。ここに入ってくる人たちも「ここは良いところです。」とおっしゃって来てくれています。明日見てもらうところもそうです。また、現在南山城村は1200戸くらいあるのですが、三分の一がニュータウンに住んでいるというもの特徴です。
この前で66回目の地域再生プロジェクトチームの会合でした。2006年3月17日にチームを立ち上げ
たのですが、それまでに村の活性化をやるために委託補助金を受けて調査が行われました。私も参加した
のですが、いつも一年かけて調査委したら報告をまとめて終わりでした。これではなんのためにやってい
るのか分からない。そこで、自分たちで続けて行かないかと呼びかけたんです。そうしたら、17人の人
たちが手を挙げてくれました。
村に住んで良かったと思える、そんな村にしたい。そのためには仲間と村を楽しむことが大事だと、地
域再生プロジェクトチームというかたくるしい名前に「村を楽しむ仲間たち」というサブタイトルを付け
ました。主旨は、知る・繋ぐ・広げる・つくりだすというものです。

柴垣さん
柴垣さん

<他にはなくて南山城村にあるもの>
 こうした活動を始めた頃は、「村には携帯がかからない」「コンビニがない」「電車は一時間に一本だ」「村はもうダメだ」「合併しかない」ということが言われていました。そのなかで、僕ら自身が村の良さを知ろうやないかと、村の良さはいっぱいあるんと違うかと議論したんです。何が村の良さなのか、その時気づいたのですが前から村に入る人は、なかなか良さに気づかない。で、あとから来た人からは、村の良さがよく出てくるんです。「緑があって、空気が綺麗で、…」だとか。
 そんな時に、奈良からこの童仙房に来て、畑はふんだんにあるし、ただで貸してもらえるし、緑もあるし、こんな良いところはないではないか、畑をやりたいという人が出てきました。そしてセカンドハウスのつもりで住んだら、奥さんも良いところだとここに定住することになりました。奥さんが最初は「いやだいやだ」と反対だったけど、そのうち古民家ギャラリーなどを始められ、いまでは奥さんのほうが熱心にやっておられます。イベントに参加して、ええとこやと移り住んでこられる方もおられます。
 水没橋がありますが、あそこがええやないかという話も。後醍醐天皇が笠置に逃げてきた時に、同行していた女官が亡くなった。その方を祭った神社もある。このように他になくて南山城村にあるものが大事ちゃうかという見直しがちょっとづつ出始めてきたのです。廃校になった小学校などもあり、京都大学が地域調査に入って、田舎を知りたいという学生なども参加し始めました。こんな動きの中でプロジェクトチームが中心になって、村おこしのための村祭りを始めたのです。実はそのまえに若者がコンサートなんかを始めて、若いもんがあれだけ出来るのに、村のもんがもっとやらんとあかんとなってやり始めたのです。

<立場もちがい考え方も違う多彩な人々>
 プロジェクトチームのメンバーはどんな人がやっていると言えば、土建業の社長さん、健康菜園塾(減反農地を借りて野菜作り)の方、しいたけ・茶の生産者・茶道の先生・炭の専門家(この方の縁で隅の会という活動も)、バンドやっている人、役場の職員、大学の先生、ホースセラピーの方など多彩です。村に家をかって「着土庵」と表札をつけておられる方もあります。人は土に着かないといけないというお考えです。
 Uターンの若者がシクロクロスという自転車競技会の開催を引っ張ってきました。
リゾートの支配人さんは、村の生産物を施設内で販売したり材料として使いたいと言っていただいていますが、生産が追いつかない状況です。またこうした活動の中で、駅回りの整備の話も出てきています。商工会議所の役員さんや文化協会の役員の方もおられ、多彩な人が村を良くしたいという点で一致してやっているのです。よくしていこうと思ってやっていると、立場や考え方は違っても「良いことは良い」とみんなが理解できるのです。
 この活動をやっていると村にはいろいろなことをやっている人が見つかってきました、これまで見えなかった生産がいろいろ結びついて広がっていく。ダムの所長さんが写真をやってくれています。大きなダムをつくると、やっぱり自然がダメになる。大学の偉い先生が「大丈夫」と言ったが嘘だった。騙されてはいけませんね。所長さんは、地元に愛されるダムになりたいと思って協力してくれています。
役場の職員さんには、地元と結びついていろいろ考えやならいといけない。上から押しつけるやり方をやっていると誰もついてこなくなる、と言っています。一つ一つの付き合いを大切に、寂れてくるので、より独りぽっちをなくしたい。あかんと思うより、良いところを見て、人間の付き合いをせまくしたらいけないと思います。なんぼ偉いことを考えても、身近な人に分からなかったら、それは空論です。これからも続けていけたらと思います。

童仙房山荘主・井上さん
童仙房山荘主・井上さん

○童仙房での模索シクロクロスなど
井上博文さん(童仙坊山荘主)


 山荘の井上と言います。帰ってきたのは3年前です。生まれ育ったのが南山城村ですが、高校の時に京都市内の高校だったので、その時に村を出て、その後大阪で働き、Uターンです。今思えば、高校の時に出たから帰って来れたと思います。
 南山城村で育って、複式学級が当たり前と思っていたのですが、街に出たら生徒が多いのにびっくりしました。週一回買える漫画があることを中学校の時に知りました(笑)。街の人とは距離感が違うと思います。3㎞、4㎞は隣という感じです。ここは汽車で街に出ますが、大阪に行ったら、一駅一駅があんなに近いと思わなかった(笑)。
 帰ってきて、何かやろうと思ってもインターネットなんか光ファイバー入れてくれはったので発信ができる。携帯も最近つながるようになった。こうしたインフラも整備してくれはって、なんとかやろうと思
い地域再生プロジェクトチームに参加させてもらいました。
人に来ていただきたい。そうするとなにかイベントをしないといけないと思いました。自分はイベントは儲からないといけないと思います。補助を受けるということもあるけれど、ちょっと助けてもらっても、頼り切りでなく運営できるものを育てて行かなくてはいけないと思います。
 趣味として自転車が好きだったので、自転車に乗ろうと調べていたら、府の自転車競技連盟というのがあって、連絡をとりました。競技にもいろいろあって、シクロクロスというのがあった。さっそく開催できないかと話をして、連盟も走れる場所を探しておられたので、昨年場所を提供して開催することになった。自転車の競技で多いものは2000人から3000人が関わっていますので、地域でやることは大きいと思っています。今年は京都の茶の道(25周年記念の年で)ロードレースというのを和束町などと開催することになっています。

報告する橋本さん
報告する橋本さん

○「花鳥の郷」をつくる行動と展望
橋本洋一さん(「花鳥の郷」をつくる会事務局)


 プロジェクトチームができて5年が経過しました。河川敷の整備の話も出てきています。京都大学の地域調査が入って、私たちの活動に刺激されながら、いろいろやろうということが広がってきています。この民宿でも少ないのですがブルーベリーをやっていますが、年間300人の人が訪れます。
 日本画の大家上村淳之さんが、南山城村に35ヘクタールの山林を持っておられ、地域と都市住民のみなさんの力で、里山として再生してほしいという話がありました。昭和28年大水害がありまして、大変な被害が広がりました。南山城村の山々も爪で掻いたように山肌が出ていたのです。しかし、自然は見事に立ち直りましたけれど、エネルギー革命で、村の産業であった、木炭と薪の生産はダメになり、山は荒れ放題になりました。上村さんは、好きに入ってくれたらよいということで、ニュータウンの人からは薪がほしいという声もあり、なにか出来ないかという話が進んでいったのです。村長からも、あんたらやってくれへんかと声をかけられ、山を楽しむということで仕事を始めました。
 目標は、都市住民との交流で、しっかりしたとりくみにしたいということでNPO法人格を取得して始めています。①里山として綺麗にする、間伐・除伐を進め、地面に光が届くようにする。②村の花(つつじ、山桜)を大事にして村人に知ってもらう。野鳥などの生物を大切に環境保護する。絶滅危惧種もたくさんあり、いま専門家に協力を得て調査しています。
 この事業をすすめる人づくりも課題です。バードウオッチングやササユリを見る会などに若い人にも呼びかけています。参加者は増えています。この事業のサポーターは増えているんですが、村民が少ない。体を動かして、何かしたいという思いは都市住民のニーズに合っていると思います。高校生も参加しています。森林組合にも協力をしてもらって技術的な面で教えてもらっています。土地問題などもあり役所関係の専門家の協力や参加も大きな力になっています。
 これからも引き継いでいく人材も探し、夢をもってがんばりたい。

茶工場の天井
茶工場の天井

 山並みホールでコンサートがあった時に、山の上でなにかできないかということがあったので、さっそく頼んでみたら童仙房でやってもよいということでした。会場は民宿でと言う話もあったのですが、隣接する茶工場が使えないかと思いました。3年前から茶工場コンサートを始めたきっかけです。
 住んでいると分からないけれど、帰ってきたらここの良さが分かってきた気がします。食べるものが美味しい。ブルーベリーも。
街の便利さが分かりませんでした。金出したらなんでも買える、飯食いたかったらどこでも夜中でも食えるし、ただこれが便利なのかどうか分からない。こっちに帰ってきた方が便利だと思います。何するにても、食べるものも、つくるのも田も畑もあるし、何かしたいなと思えば茶工場もあるし、なにか作りたいなと思ったら道具も場所あるし、机でもつくれる。そういう所の方が便利やと思います。そう思って帰ってきました。忘れないうちに三べん来て下さい。童仙房に帰ってきてくれている子も以外といるし、通っている子もいます。私の世代ががんばっていきたいと思っています。

渡辺代表のまとめと閉会のあいさつ

渡邊世話人
渡邊世話人

 田中代表が、開会でふるさと再生の住民運動のマグマを学ぶと言っていたが、40年間村づくりに関わって来て、改めてまちづくりが「人づくりにつきる」思いを強くした。南山城には何度も通ってきたが、3人の報告者から改めて学ぶことが多かった。柴垣さんには、学校の先生に対するイメージ、認識が変わった。こういう先生もいるんだなあと感動している。プロジェクトの目標「村を楽しむ」、その会員の多彩な顔ぶれ。学ぶべきは、この多様な顔ぶれを組織でできるか。単一ではなく多様な顔ぶれを組織できることが「ふるさと再生」の鍵になる。
 地域を変えるのは、地域に住む人自身。そのためには地域の歴史と宝を掘り起こすことが必要だが、地域の者だけでは見つけられない、よそ者や井上さんのように一旦離れて戻ってきた人など多様な目で見て良さがわかる。上から目線で、難しいことを言うのではなく、村人の目線で活動し、行動する。地域をどうするか村人の暮らしをつくるためにどうするか考えた取り組みがすすめられている。
 宗教は来世の極楽浄土づくりだが、我々は現世の極楽浄土づくりを取り組んでいる。話を聞いていると南山城には現世の極楽浄土が出来つつある。みんなが夢を抱いて、村をどうする、童仙房をどうすると考え行動している。3人の話は我々を勇気づけた。南山城への訪問は久しぶりだが、その変化に驚いている。
 「村づくり」の確信を村民のものにすることが課題ではないか。地元の人自身が確信をもつ、童仙房に文化人や芸術家、外者が住み、何故通ってくるのか。童仙房に集まってくる魅力があることを住民自身の確信にしていく。その点で若い人の発想力、目の付け所が違うなあと感心する。若者の発想センスから学ぶ自転車であったり、コンサートであったり、若者のセンスを大事にしている。とかく村づくりは年寄りが集まる傾向があるが、若者から学ぶことが必要。南山城ではまさにその事が実践されている。現世の極楽浄土が南山城で実践されている。世代間の思いや動きを学び、村づくりに組み込んで取り組まれている実践を学んだ。大いに学習できて良かった。

交流会

【二日目】南山城村現地学習会

ホースセラピー

 童仙房山荘から車で5分くらいのところに「なつか動物療養研究所」はある。飼っている馬は2頭。私たちもえさをやったり体に触れたり眺めたりさせて頂いた。馬の暖かい体に触れ、やさしい目を見ているだけでもいい気分になる。子どもたちがたてがみを引っ張ろうがたたこうが動じないように馬は育てられている。
 主宰をされている慶野さんは一昨年犬山から引っ越してこられた。地域再生プロジェクトにも出会い、童仙房の地域からも受け入れられている。やさしく情熱的でとても尊敬できる方だ。
自閉症の子どもたちの療育に大変効果的ということで、広く普及していくため、データ収集と研究発表を積極的に行っておられる。ホースセラピストをめざしたい若い人もいるが、いまのところ採算が取れる状況にはない。海外では保険適用があるところもあるそうだ。

花鳥の郷

 花鳥画の権威である日本画家の上村淳之さんが、京都府南山城村にある10万坪ほどの荒山を地元住民と共に、里山に再生したいという申し出があり、村から地域再生プロジェクトに打診があった。プロジェクトではこれを受けて橋本さんを事務局長に活動を始め、今年1月にはNPOを立ち上げ、本格的に動き出した。
 門扉を作り、整備作業を行い、水を確保するための仕掛けや、集団作業に欠かせないトイレ・休憩小屋などができた。会員・サポーターなどあわせて115名がいる。結構ハードな作業だが女性の参加も多いそうで、トイレができたことが本当にうれしそうだった。作業の他に探鳥会、ツツジ花見、ササユリ見学会もあるそうで、私たちも若いササユリが大事に保護されているところを見せて頂いた。

大河原発電所

 南山城村電力自給率148.76%の秘密は関西電力大河原発電所にあった。90年前、「京都電燈」が建設したこの発電所は村に電気をともし、20名を超える地元の雇用を生みだしたそうだが今は無人となっている。赤煉瓦の美しい建物が緑の山に美しく映える。
 取水口は山の反対側にあり、トンネルを通じて発電所背後の水槽に供給される。ここは橋本世話人の子どもの頃の魚釣り場だったそうだ。

カフェネコパン

 旧田山小学校を活用してできた施設ハドル。
ハドルとは「円陣」に近い語。木工、おもちゃ、ガラス細工、民族資料など主に自然な手作りの
ものと、カフェネコパンがある。カフェネコパンのメインはベーグルだそうだが、本日の訪問
者の年齢層を考慮して、ご飯となっていた。
 南山城村ではあちこちで自転車のツーリストに出会う。ここにも大阪などから自転車で訪れ
る人もあるそうで、素朴且つモダンな空間だ。

手島ギャラリー

突然見に行こうと言うことになって、手島先生(元京都教育大学長)のお宅へ。奥様がギャラリーをされている。
田舎暮らしをめざし、売りに出された古民家を購入改修され素敵な内装になっている。はじめは奥様は不便だからと反対されていたようだが、親切なご近所などをすっかり気に入って、いまでは南山城村の良さを生かしとても活発に活動をされているそうだ。

直売所

 南山城村直売所 昨日紹介のあった「椎タマ焼き」を賞味。おいしかった。ブルーベリーなども売っていて、おみやげに買って帰った。

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