「夜久野の郷」のふるさと再生に学ぶ

 2014年8月2日(土)・3日(日)に農匠の郷やくのを中心に、ふるさと再生京都懇談会と京都府有害鳥獣問題研究会の主催で開催された「夜久野の郷のふるさと再生に学ぶには、32名が参加しました。

 以下現地見学と研究会の報告をします。

 なお、当日の詳しい記録がないので事務局の責任で趣旨を報告しています。それぞれの報告者の皆さんにはご本人の趣旨と相違しているところもあろうかと思われますが、ご容赦願います。

 

「やくの木と漆の館」と有限会社「田舎暮らし」の食肉加工施設を見学

 参加者はまず「やくの木と漆の館」で丹波漆の伝統と漆の採取・加工・特徴について説明を受けました。

 次に食肉加工施設に移りその日の朝に有害鳥獣対策で捕獲された鹿の解体の様子を見学しました。

 
木と漆の館
木と漆の館
「田舎暮らし」食肉加工場
「田舎暮らし」食肉加工場

丹波漆の再生と有害鳥獣の活用でまちおこしを-研究会

 つづいて、夜久野荘において研究会を開催しました。

丹波漆の再生と漆文化の創造

丹波漆の再生とNPO法人の活動

岡本嘉明理事長
岡本嘉明理事長

 まずNPO法人丹波漆の会理事長の岡本嘉明さんからNPO丹波漆の歴史について報告がありました。

  夜久野は古くから日本でも有数の漆の山地として知られていました。丹波漆は「養老律令」や「古事類苑」などの文献に、奈良時代初期に丹波の漆の樹液が税として納められていたことが確認できますし、古墳時代の遺跡の中にもその使用を伺わせる物が残っています。しかし戦後、科学塗料の発達と、安価な中国漆の輸入により全国的に漆が衰退します。 その中にあって、夜久野では衣川光治という人が1948年に丹波漆生産協同組合を立ち上げ、苗木の育成から植林、生産と丹波の漆産業の生産を支えていきました。

 その努力を受け継ぎ1999年には西日本の漆を守る会を結成。当時東日本にしか文化庁の補助金が出ていなかったものを改善させました。

 2000年7月には「やくの木と漆の館」が開館。都会から高橋治子さんという漆の専門家が来てくれたことが現地の漆掻きさんを大いに励ましました。

 現在漆掻きに従事している人は5名しかいません。6月から9月の間1本の漆の木から採れる漆の量は平均して200ccです。

 それでも地域伝統総合活性化事業に採択され、衣川光治さんの精神を受け継いで2012年に丹波漆生産協同組合からNPO法人に移行しました。

 NPO法人の課題は後継者を育てることと漆の木を植えることです。

 

「やくの木と漆の館」の活動

高橋治子館責任者
高橋治子館責任者

 つづいて、「やくの木と漆の館」館責任者高橋治子さんから館の活動について報告がありました。

 「やくの木と漆の館」は2000年に開館しました。漆掻きの衰退の中で衣川光治さんのがんばりが施設の建設に繋がったのだと思います。漆の館の開館は、地域に夜久野の漆に対する理解を広げました。館は設立当初は夜久野町直営、今も福知山市営となっておりこのことは重要なことです。

 高橋さん自身漆の専門の学校を出られて夜久野で漆の館が建設されることを知りこちらで就業されました。その後も漆の採れるところとして館の嘱託スタッフとして就業し、夜久野に定住する人が現れています。

 館では漆の生産や工芸品について学んでもらうほか、体験教室を開いて漆の良さにも触れてもらっています。漆の体験ができる公共施設は日本唯一です。

 国産漆は鮮度とつやが違います。夜久野の漆の質の良さ、その漆を手に入れるために1本の木に25回通って200ccしかとれないこと、200ccの漆が採れるようになるまでに10年かかることそのために補助金が重要な役割を果たします。

 夜久野は漆の産地としてまだ成立していないが、クオリティーを上げることによって、使ってくれた人がリピーターになり宣伝してくれています。

 

夜久野町の有害鳥獣対策と有効活用・加工販売

夜久野における有害鳥獣対策

中村英俊福知山市議
中村英俊福知山市議

  中島英俊福知山市議からは福知山における有害鳥獣対策について報告がありました。

 福知山における農作物被害額は6130万円、過去最高だった2012年度の93.5%で、京都府全体が過去最大に比べ65.2%になっているのに比べ、その対策が遅れています。

 一方、福知山における鹿、イノシシの捕獲数は2013年度で鹿3478頭、イノシシ1327頭で、鹿の場合、舞鶴や綾部より桁違いに多いです。

 福知山では駆除隊に登録されている人は、181人おり、年齢構成は60歳70歳代が中心です。駆除には報奨金が1頭あたり8000円、狩猟期でも4000円出るようになりました。

 捕獲した有害鳥獣の処分が問題となっており、福井・若狭町に建設されている広域施設を参考に、福知山で2014年3月前倒し補正で焼却施設の建設が決まった。これには、舞鶴市、綾部市も処分件数に応じた負担金を拠出する。

 1回最大380kg、鹿にして9~10頭、イノシシで20頭、1日2回運転が可能で、800度以上でダイオキシンを出さないものとなっており、処分場問題の解決に大きく貢献する。

 今後の課題としては、駆除隊員で成果0の人を亡くすため講習会等を行っていくこと、狩猟者登録をして3年以内の人も駆除に参加できるようにすること、駆除を原則ワナとしていることの是正などがあげられます。

 

有害鳥獣の食肉加工販売、(有)「田舎暮らし」の活動

中島健太郎代表取締役
中島健太郎代表取締役

 中島健太郎さんは府の就農支援事業を活用して2003年に就農。農業経営を成り立たせるため、2005年に(有)「田舎暮らし」を設立。現在代表取締役を務める。

 年間80頭ちかくの鹿をとっているがこれまで全部埋めていた。しかし鹿はおいしいという認識があり、皮、爪、骨に至るまで活用できるものなので食肉加工上を昨年3月に建設。鹿はさばき方が良ければおいしいので是非軌道に乗せたい。狩猟方法も肉になることを想定して、首から下を傷つけず、とどめを刺してから出来るだけ早く血抜きをするなどのことが必要。

 今はまだ販路が確立しておらず、100頭近くとった鹿が売れずしぐれ煮やハンバーグなどになっている。

 同じような試みをしているところは美山、京丹後市、久御山町など。美山がうまくいっている例になる。

 

農匠の郷やくのの紹介

中島松治夜久野公民館長
中島松治夜久野公民館長

 中島松治夜久野町公民館長からは、農匠の郷について紹介。

 多くの山村地域と同じように過疎と高齢化に悩まされている夜久野町が、集落農業生

産を再編し生き残りをはかった。そのなかでこれまでの仕組みの変換のみでは農家の暮らしと地域経済には対処できず、地域循環経済の実現を目指し、農林商工業の連携による地域資源と農林業の付加価値化、さらに都市との提携交流を目指して、「農匠の郷やくの」を建設した。

 農匠の郷には夜久野高原温泉ほっこり館、宿泊施設夜久野荘、茶室、レストラン夜久野本陣、そば処喫茶特産品販売の夜久野マルシェ、地元産野菜を販売する夜久野高原市、やくのベゴニア館、地元産大納言小豆を使った和菓子販売のやくの花あずき館、こども等体験農園、夜久野町化石・郷土資料館、やくの木と漆の館があり、多様な経営主体が、ふるさと公社の破綻等により当初とは変わっており、また福知山市に合併されたことにより推進体制も変わっているがそれぞれの施設が連携して役割を果たすことが求められます。

 

夕食交流会

ジビエ料理
ジビエ料理

(有)「田舎暮らし」のジビエ料理と「岡本ファーム」の京ブランド「京地鶏」の料理で交流 

夜久野の郷を見学

 二日目は朝から茶道を見学。境内には八十八カ所石仏の1番、2番、70番、71番があります。地元の人たちでお祀りされ茶道共々整備がされています。入り口には大きなイチョウがあるが、雌雄の樹が一体となってまるで1本の木のように育っています。

 それから夜久野高原市に戻り、思い思いに地元の野菜を買いました。夜久野スイカを買われている方も多かったです。

 夜久野花あずき館では地元の小豆を使ったぎんつばをはじめとする和菓子が作られており、製造工程を見学できるし、つくりたてのぎんつばをお抹茶で味わうことも出来ます。 その後ベゴニア園にも行きました。

  そして玄武岩公園へ。京都府唯一の火山といわれる宝山の噴火で流れ出た溶岩が冷え固まるときにできた六角形の柱状節理を鑑賞。このあたりは石材の採取場として栄えたそうで、周りには石材店が多く見られました。

 ご案内頂いた地元の皆さんありがとうございました。

 今回は京都府有害鳥獣問題研究会との共催ということで、さらに交流の輪が広がりました。

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